「シンプルな政府」キャス・サンスティーン著 NTT出版2018/04/01 05:58

★★☆☆☆

行動経済学に関する著作の多い著者による、オバマ政権でOIRA(情報・規制問題室)室長を務めた経験を通じて実践した改革について述べた著作。 行動経済学を実践に移すとどのような効果が得られ、またコスト削減も図られるのかについて述べている。

本書では著者独特の言い回しがあるためやや読みにくさがあるもののそれぞれの言葉についての理解さえあれば、すっと入ってくる。

まずはナッジ。これは、「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える要素。」つまり行動経済学の理論の応用である。本書で紹介されている例として、健康的な食生活についての情報提供するためのツールの改定、医療保険制度への自動加入ルールの設定、タバコのパッケージの改定、エネルギー消費量の隣人との比較表示、有権者への投票周知などが挙げられている。

そして、費用対効果分析。これは、規制の再検討・縮小のためのツールである。<br> これとセットで行われたのが規制の「純効果」の最大化である。事実オバマ政権では91億ドルの大きな成果が現れていると図表により説明されている。

さらに、デフォルトルール(人間が明確な選択をしない場合に初期設定をしておく仕組み)、フレーミング(情報の伝えられ方)、簡素化(複雑さが重要な社会目標の達成を阻害する)などが本書の一貫したキーワードである。

一方で、著者は「選択と自由市場は、繁栄と人間の自由をもたらす偉大な動力である。」とし、自主性と透明性を尊重することも述べている。

いずれにせよ、本書の主張する大部分は、日本でも十分取り入れ可能であり、大いに参考とすべき著作である。

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