「リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ」ジェームズ・ヒュームズ著 海と月社2018/04/13 08:31

★★★☆☆

本書は、歴代大統領アイゼンハワー、ニクソン、フォード、レーガンなどのスピーチライターを務めた著者によるスピーチの技術に関するノウハウ集である。
表題だけでも参考になる。
1 まずは「沈黙」
2 強烈な「第一声」
3 正しい「外見」
4 先に「結論」
5 思い切って「短く」
6 差がつく「引用」
7 信頼を勝ち取る「数字」
8 スパイスとしての「視覚資料」
9 本物の「ウィット」
10うならせる「例え話」
11 魅せる「ジェスチャー」
12 失敗知らずの「原稿の読み方」
13 「詩」を語る
14 胸に刺さる「決め台詞」
15 流れを変える「質問」
16絶妙な「強調」
17 威厳が増す「能動態」
18 「資金調達」のための語り
19 「スイッチ」を入れる
20 万雷の拍手を呼ぶ「締めくくり」
21 堂々と我が道を

とはいえ、チャーチルやリンカーン、レーガンなどの豊富な演説や名言が豊富に散りばめられ、読み物としても楽しい。

以下、興味を惹かれたところを引用する。
「ナポレオンも、パワーポーズすなわち強烈な沈黙で始める名人だった。終結した軍隊を前に、ナポレオンは無言で立ち、40〜45秒もたってから演説を始めた。…アドルフ・ヒトラーも非常に雄弁であると同時に、パワーポーズの名人であった。彼はこの長い沈黙で聴衆の関心を一身に集めた後、ささやくような声で話し始めた。『我々は平和を求めている』」

漫然とした演説を軽視していたチャーチルは、「さまざまな晩餐会で他の人々が話をしているのを聞いて心から楽しめるか」と聞かれたときこう答えた。『人前で話す人は多いが、頭の中で考えている人が少なすぎる。』

アメリカ大統領ジェームズ・ポークは、就任演説で3分間しか話さなかった。美辞麗句を省き、大統領として行っていくことだけを述べたのだ。すなわち、テキサスの併合、関税引き下げ、イギリスとのオレゴン国境紛争の解決などである。そして実際にこれらの課題を4年間で成し遂げた。

ある全国的な電気器具会社のCEOは、株主総会の場で、通常なら行う原稿を読みながら最低30分はかけて挨拶をして、経済の外観と予測を述べるのではなく、次のように切り出した。「株主の皆さん、数字と今後の見通しは報告書のとおりです。」一息入れてから、「順調に伸びています!」

ウィンストン・チャーチルは決して写真を使わなかった。フランクリン・ルーズベルトはフローチャートを使わなかった。ロナルド・レーガンはスライドを使わなかった。彼らはビジュアルは声の代わりにならないと心得ていたからだ。それなのに、あまりに多くの人が自らを軽んじて、視覚に訴える資料に頼ってしまうのは何故だろう。

聞き手を引き込むには、こんなふうに始めなければならない。「私が育った街にいたおばあさんが…」、「私の知り合いの弁護士の依頼人に…」

演説の名手バーク・コクランがチャーチルとルーズベルトに教えた強い印象を与える話し方、その第一のルールは次のとおりだ。『目を下に向けているときは、ぜったいに、ぜったいに、ぜったいに言葉を発しない。』

これ以外にも、本書には珠玉の名言がたくさん散りばめられている。

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